フィギュアスケートファンになるまでその3
男子ショートが始まる前は、羽生くんが平昌に到着したらニュース!、羽生くんの練習があったらニュース!、羽生くんのインタビューがあったらニュース!と注目の度合いが他の選手とは全然違うというのはさすがに分かりました。
インタビューがもう、「金メダル取ります!」という強気なものだったので、すごいなあ、と感じると同時に、不思議と安心して怪我をしていようとも羽生くんが金メダルを取るものだと思っていました。
ニュースでは、色んな外国人記者が金メダルを予想していましたが、羽生くんが金メダルと予想した人は少なく、「何でだよ!」と思ってましたが、その時、彼が今シーズンまだ一勝もしてないことなどは知りませんでした。
そして当日。話題だから羽生くんを見てみよう、そう思ってみた平昌五輪のショート。最終グループになって、ようやく羽生くんが現れる!
素人目にも分かる。他の選手と全然オーラが違う…。
真剣なまなざし。貫禄とも違うような。
私のなかでの羽生くんはかわいくてキザな「パリの散歩道」のままで止まっていたので、ずいぶん男らしくなったなあ、なんて感じていました。
でも見るのはとても緊張しました。なぜなら、私がオリンピックを見ると、負ける…。バンクーバー五輪で真央ちゃんに勝ってほしかったけれど、負けてしまった。怖かったけれど、それでも見たいという気持ちがより強かったのでやっぱり見ました。
ショートは「バラード第一番」。ファンにとっては3シーズンやってておなじみのものだったでしょうが、私にとってははじめてでした。
音楽がなって、彼が数秒間じっと動かない間がとても長く感じ、それからはあっという間。最後のステップに入るちょっとホラーな表情が凄まじかった。
まるで若き天才ピアニストの苦悩、情熱、昇華、そういったものがピアノとともにイメージで流れてくる、そんな印象を受けました(あくまでも私がイメージした羽生くんのバラード第一番です!)。
あの2分半に、一気にその世界へ引きずり込まれたのです。
終わった後の表情といい、「この人は役者だ。役者なのだ」と感じると同時に、降り注ぐプーの雨。
なんかスゴイものを見てしまった。怪我でブランクがあったのに、これまでに放送されてきた選手と全然完成度が違う…。
ボーゼンとしてしまい、それからの選手のことは頭にはいってこなかったです。
実は次の選手がネイサンで、金メダルの有力候補だということもよく知らなかったし(事前番組見たはずなのに)、宇野くんがいい点につけてホッとして、ハビエルが高得点を出してドキドキして。でも内容はあまり覚えていませんでした。
アルベールビル五輪から振り返っても、この日ほど、フィギュアで興奮したことはなかったです。
でも私にとっては、難しいルールはよく分かんなくても、羽生くんの放つオーラや、「一人だけ飛びぬけてスゴイ」ということだけは理解したのがこの平昌のショート「バラード第一番」だったのでした。
今思えば、もっと前からフィギュアに踏み込んでファンになっていたなら、ソチ五輪の時点からもっと羽生くんに興味を持って見続けていたなら、これまでももっと楽しんで見れただろうし、数多くの名場面もリアルタイムで感じることが出来たのに、と後悔したのでした。